日本農芸化学会誌
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廃糖蜜のアセトンブタノール醗酵に関する研究
(第1報)助棲菌に依る或る種異常醗酵の抑制効果について
木下 祝郎志賀 昭夫奥村 拓二
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1954 年 28 巻 1 号 p. 83-87

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抄録
1. 癈糖蜜のアセトン・ブタノール醗酵に於てしばしば経験される各種異常醗酵の中,著者等がB型と呼ぶ1種の酸醗酵を改善する目的で有効助棲菌の探索した.
2. 試験した各種好気性菌或は酵母等の中でTorula utilisはしばしば異常醗酵を起す台湾糖蜜醪を旺盛に醗酵せしめ, B型異常醗酵を解消する作用のある事を知つた.亦この助棲作用に依り糖蜜醗酵に適さないと考えられていた多数のブタノール菌株も使用驚能となるものである事を知つた.
3. この有効因子は加熱で容易に破壊され且培養濾液中にも存在する.この濾液のinvertase activityを検した処,蔗糖の強い転化力を有する事が証明され,廃糖蜜をこの濾液で転化して醗酵に用うれば良好な醗酵を行うので,この菌の助棲作用はそのinvertase activityに在ると考えられる.
4.Torula utilisの外種種の酵母,糸状菌の中にもこのinvertase activityの強いものを認め,これらの中でsolvent比に影響を及ぼさない菌株は助棲菌として使用可能であろう事が推察される.
終りに異常醗酵に関し種種御教示を賜つた東大坂口教授,朝井教授,有馬助教授に対し,亦本研究に鞭撻と発表の許可を与えられた協和醗酵工業社長加藤弁三郎博士に深く感謝致します.
本稿の要旨は昭和27年4月農芸化学大会で口演した.
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