1959 年 33 巻 13 号 p. 1134-1138
(1)α-カゼインは比較的広いCaCl2濃度に亘って乳濁し,略安定したミセルを形成するが,レンニン作用を受けるとその溶解度曲線はレンニン作用の進行につれてなだらかな傾斜から垂直な傾斜へと変化する.レンニン作用完結後は一定のCaCl2濃度以上で殆んど完全に凝固する.他のアルカリ土類金属も同様に一定の臨界濃度以上でパラα-カゼインを凝固せしめα-カゼインを乳濁せしめる.その臨界濃度はBaCl2<CaCl2<SrCl2<MgCl2の順に増加する.
(2)パラα-カゼインはα-カゼインよりも等電点のアルカリ側のより広い範囲に亘って酸凝固しやすい.又パラα-カゼインの酸凝固物はα-カゼインのそれよりも尿素に対する溶解度が尿素濃度3~6Mに亘ってやや小である.
(3)α-カゼイン及びパラα-カゼインの酸-塩基滴定曲線の間には殆んど相違を見出すことができない.
(4)透析平衡法により求めた未分割カゼイン及びパラカゼインのカルシウム結合量の間にも殆んど差を見出すことができない.