日本農芸化学会誌
Online ISSN : 1883-6844
Print ISSN : 0002-1407
ISSN-L : 0002-1407
醗酵乳に関する研究(第7)
非醗酵性乳について(2)微量ペニシリンのL. bulgaricusによる乳酸醗酵に及ぼす影響並びに牛乳中のペニシリンの耐熱性について
大木 豊三
著者情報
ジャーナル フリー

1960 年 34 巻 9 号 p. 792-794

詳細
抄録

脱脂乳にペニシリンを加え100°, 30分の加熱殺菌を施した後, L. bulgaricusの脱脂乳培養3%を加え37°恒温器内に保ち一定時間毎に乳酸酸度を測定し,牛乳中のペニシリンがL. bulgaricusの乳酸醗酵に及ぼす影響を検し,次のことが明らかとなった.
(1) 加熱前の乳中のペニシリン濃度(以下ペニシリン濃度とす)が1I. U./mlの場合は,生酸はほとんど完全に阻止された.
(2) ペニシリン濃度が1I. U./ml以下になると生酸は漸次高まり1/100 I. U./mlでは正常の乳酸醗酵となった.
またL. bulgaricusの乳酸醗酵試験により水溶液並びに牛乳中のペニシリンの耐熱性を検した結果は次のようであった.
(1) ペニシリンは水溶液の状態で加熱される時は100°, 30~45分程度の加熱で1.0, 1/10, 1/25, 1/50 I. U./mlの各濃度の場合とも何れも失活する.
(2) 牛乳中で100°, 35~45分の加熱では2.0, 1/10,1/30 I. U./mlの各濃度の何れのものも完全には失活しないが,加熱時間を120分に延長すれば1/30 I. U./mlの濃度のものが失活し,これより高い濃度のものは失活しなかった.
(3) 牛乳中で120°に加熱された場合は,ペニシリンの濃度が1/10 I. U./ml以下の場合は60分で失活するが, 1 I. U./mlでは120°, 60分の加熱をもってしてもペニシリンを完全に失活させることはできなかった.
またこの実験の結果から,ペニシリンの加熱後の活性度は単に加熱温度と加熱時間にのみ影響されるのではなく,ペニシリン自体の濃度にも大いに関係があることが明らかになった.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本農芸化学会
前の記事 次の記事
feedback
Top