日本農芸化学会誌
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芳香生産性Geotrichum属菌の分類同定
後藤 昭二山川 祥秀横塚 勇
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1975 年 49 巻 10 号 p. 519-525

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抄録

芳香物質生産微生物として分離したArthrosporae型不完全菌類65菌株の分類同定を行なった.供試菌は,いずれも顕著に果実様芳香を生産した.コロニーは白色ないし淡褐色,粉状ないし羽毛状で,分生子柄が不明瞭な分節胞子を形成することからGeotrichum属に属する.供試菌株は,形態的な特徴の相違によって4群に分類することができた.これら4群は,また生理的性質,特に発酵性,炭素化合物の同化性およびビタミン要求性においても,それぞれ特徴ある性質を示すことが認められたので,形態的特徴のほか生理的特徴をも考慮して,供試Ceotrichum 65菌株を次のように分類同定した.
A, B両菌群の51菌株は, G. candidumと同定された.しかし,この菌群は生育にピリドキシンを要求するB菌群・11菌株と非要求のA菌群・40菌株とに区別された. C菌群, No. F-2-9, 1菌株は長円筒形の分節胞子と菌糸に不規則な分岐を形成すること,またグルコース,ガラクトースを発酵し,炭素化合物の同化性も他の菌種とは異なった特徴を示すことなどから,新種G. ficiとした. D菌群の12菌株は,特異的に大きな方型ないし長方型の分節胞子と厚膜胞子を形成すること,またグルコース,ガラクトース,シュ-クロースを発酵すること,グルコース,ガラクトースのほかシュークロース,マンニットを同化しキシロースを同化しないことなど,発酵性や炭素化合物の同化性も,他の菌種から区別しうる特微を示したことから,新種G. rectangulatumとした.

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