日本農芸化学会誌
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Rhizopus菌による酒類製造に関する研究(第3報)
変り麹の製造法
月岡 本廣井 忠夫鈴木 恒夫
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1989 年 63 巻 1 号 p. 19-23

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抄録

Rhizopus属菌株の有機酸生産能力と特徴ある香味を酒類製造に利用する目的で, IFO 4705の変異株U-12を使用した変り麹の製造について検討した.Rhizopus属菌株は蒸米には生育しにくく,酒類製造に利用する場合には生米を利用するのが常である.しかしながら,良質な麹を作るためには原料米を蒸すことによって殺菌する必要がある.蒸〓によって流失するアミノ酸を補添するため,含アミノ酸水へ浸漬加工した白米の蒸米に変異株U-12を良好に繁殖させ,麹とする方法がある.しかし,この方法は酒税法の清酒の定義を逸脱するため採用できない.そこで,特定のアミノ酸を添加した蒸米には,Rhizopus属菌株がよく生育できるというこれまでの結果を生かして,次のような変り麹の製造法を考案した.すなわち,蒸米に常法に従って黄麹菌を接種して,Rhizopus属菌株の生育に必要なアミノ酸に富む麹を作り,これに水を吸収させて含水率40~45%で蒸〓し,放冷後,変異株U-12を接種し,35°Cで製麹するものである.この変り麹は,通常の黄麹菌の麹に比較して有機酸が多く,とくにフマール酸,クエン酸,リンゴ酸を多く含んでいた.これは,香味に特徴を有する清酒を製造するのに適している麹と考えられる.

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