抄録
この研究の目的は,矯正施設退所者であって,実際に地域生活をしている障害者の生活状況の実態を調査することにより地域生活支援のモデルを示すことである.方法として,まず,全国の相談支援事業所(一般相談)に対し矯正施設退所者の相談支援の実績について悉皆で往復はがきによる調査を行った(第一次調査).その結果,相談支援事業所における矯正施設退所者の支援実績は年々増加しているが,多くの相談支援事業所では支援経験がなかった.次に,矯正施設退所者を3ケース以上支援している相談支援事業所及び当該相談支援事業所のある道府県の地域生活定着支援センターの合計25か所の事業所を訪問し,77事例を収集して検討した(第二次調査).その結果,矯正施設退所者の地域生活支援のモデルとして①地域生活支援の枠組みとしての「支援の3段階」,すなわち第1段階の「医療」「当面の居住の場」「障害者としての社会的承認手続き」,第2段階の「福祉サービス」と「経済的基盤(生活保護を含む)」,第3段階の「就労」という段階がある,②維持・継続出来る支援関係,の2点が導かれた.このモデルを踏まえて相談支援事業所,障害者支援施設,地域生活定着支援センターのそれぞれの役割について考察を行った.