日本食品科学工学会誌
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技術論文
包装さきいか貯蔵中の褐変の特徴
山澤 正勝大村 裕治佐藤 峰寅
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2006 年 53 巻 2 号 p. 137-142

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抄録

生イカを原料としたさきいかの保存中の褐変の特徴を明らかにする目的で,保存温度および酸素含量と褐変の関係,さらには原料だるまの種類および製造工程が褐変に及ぼす影響について検討し,以下のような結果が得られた.
1.さきいかの色調の評価は,測色色差計によるa*値,b*値で評価する方法が有効であった.
2.さきいかの褐変は,温度の上昇と共に促進されるが,その色調の特徴は含気条件下では黄褐色となり,脱酸素条件下では赤褐色になることであった.
3.脱酸素条件下において生じた赤色度の強い褐変は,含気包装に移すと抑制された.
4.さきいかモデルの褐変は,スルメイカ,アカイカおよびニュージーランドスルメイカに共通の現象であったが,褐変の強さは原料だるまの種類によって異なった.
5.製造工程とさきいかモデルの褐変との関係から,生肉から調製したさきいかモデルは,煮熟工程あるいは煮熟-乾燥工程を経たモデル製品に比べて著しく褐変した.このことは,前報8)9)で推測したように,さきいか褐変の主たる原因成分はリボースであり,生イカ試料の場合は保存中にATPの分解がさらに進行してリボースが蓄積すること,煮熟試料ではATP分解に関与する酵素系は加熱によって不活性化されるためと推察された.

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© 2006 日本食品科学工学会
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