日本食品科学工学会誌
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レトルト加熱によるアクトミオシンゲルの物性変化に関する研究
藤田 利宗林 利哉芳賀 聖一
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2006 年 53 巻 8 号 p. 423-429

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抄録

レトルト食肉製品の食感低下の要因を解明するために,食感の重要因子とされるAMを用いて,様々な加熱条件による加熱ゲル形成に関して検討を行った.その結果,加熱時の昇温速度が速い程,またゲル形成至適温度を超える条件において加熱温度が高い程,得られるゲルの破断強度は低下し離水率は高くなることが明らかとなった.またこれらのゲルは,球状の凝集体から成るaggregated-typeの微細構造を呈していたことに対して,これよりも高い物性を示したゲルは,細い繊維状のstrand-typeの微細構造であった.これらのことからレトルト加熱ゲルが示した低い物性は,aggregated-typeの微細構造が原因であると示唆され,微細構造の画像解析値からもそれを強く支持する結果が得られた.更に,レトルト加熱ゲルの微細構造がaggregated-typeを呈した原因として,次の2つの要因が考えられた.まず1つ目の要因として,SDS-PAGEおよびウェスタンブロッティングの結果より,高温加熱を伴うレトルト加熱ゲルは,ミオシンおよびアクチンから成る巨大な会合体を形成していることが明らかとなり,この会合体のゲル形成への関与が,微細構造をよりaggregated-typeに進行させる一因であることが示唆された.またDSC測定の結果より,レトルト加熱処理がもたらす速い昇温速度は,ミオシンのTmaxの高温域シフト化に加え,〓Hの増大を引き起こすことが明らかとなり,このミオシンの変性挙動の変化がaggregated-typeの微細構造を惹起するもう1つの要因であることが示唆された.

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© 2006 日本食品科学工学会
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