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日本食品科学工学会誌
Vol. 54 (2007) No. 3 P 142

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http://doi.org/10.3136/nskkk.54.142

技術用語解説

動物の体内には腸内細菌や口腔内細菌のような常在菌が多数存在する.このうち実験動物を飼育するにあたって,実験の障害になるような特定の病原菌が存在しないことが保証される条件をSpecific Pathogen Free(SPF)と言う.
実験動物のブリーダーから購入できる動物の多くはSPFを維持できるバリア施設で飼育繁殖されたものでありSPF動物と呼ばれる.SPFを維持して実験動物を飼育するためには,高度にバリア性の高い飼育施設と,SPFを維持するための管理体制が必要である.飼育室はHEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)を通した空気で与圧し,外部から微生物が進入するのを防ぐ.圧力を逃がすリリーフダンパーの形状によっては昆虫が風の流れに逆らって飛び込む事もあるので空調施設の設計には細心の注意を要する.
実験者は手指を消毒し,清浄な実験衣に着替えて飼育室に入室する.前室ではエアシャワーなどによって付着物を除去する.入室者の室間の移動は一方向でなくてはならない.入室し,飼育室,実験室を通って作業を行い,別の出口から退室する.動物や器具はエアロック構造のあるパスボックスを通して搬入,搬出する.準備室と飼育室をつなぐ大型のオートクレーブを設置することもある.
SPFに対して通常の実験室で実験動物を飼育することをコンベンショナル飼育と言う.通常の栄養実験等はコンベンショナル条件下で行われることが多い.これに対して,免疫,アレルギー,発癌,薬理試験などはバリア施設内でSPF動物を用いて行われることが多い.SPF動物は飼育条件が一定に保てるため,他の実験施設での試験成績との比較がしやすい.
コンベンショナル条件下でもHEPAフィルターを通った空気を送ることのできる飼育キャビネットを用いることによって,バリア環境下でSPFに近い環境で動物を飼育することもできる.
バリア施設の汚染原因と考えられるのは,飼育実験作業従事者が病原菌を持ち込む場合,あるいはブリーダーから購入した動物が汚染されている場合である.ブリーダーは定期的に動物汚染チェックを行っており,汚染動物が納入されてしまうことはほとんどない.作業従事者からの汚染を防ぐためには,自宅でげっ歯類を飼育しない,コンベンショナル飼育室で作業を行った後はバリア施設に入室させない,などの注意も必要である.
SPF動物の清浄性を維持するためには,定期的に飼育動物の微生物モニタを行う必要がある.微生物モニタを受託するブリーダーもあるので,指定された滅菌容器に動物を入れてブリーダーに送る.数週間のうちに微生物検査の結果が得られる.
病原菌による汚染が見つかった場合には直ちに実験を中止し,動物を処分して施設の消毒をし直す必要がある.動物をどうしても処分できない場合には,できる限り数を減らした後,動物を抗生物質等で除菌する.病原性微生物が完全に除去できたことを確認した後,実験を再開し,新しい動物を購入する.
実験動物とは別に,食肉としてSPF豚が販売されている.SPFであるので無菌豚というわけではないが,日本SPF豚協会によると,萎縮性鼻炎,豚赤痢,オーエスキー病,トキソプラズマ感染症,マイコプラズマ肺炎の5つの病気については,SPF豚はこれらに感染していないことが保証されている.

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