日本食品科学工学会誌
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技術論文
天然または化学調味料を活用したねり製品の品質
高野 隆司平 和香子阿部 宏喜里見 正隆小善 圭一舩津 保浩
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2007 年 54 巻 4 号 p. 187-194

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抄録

本研究では化学調味料を使用せず,天然調味料(魚醤油,鰹節・昆布エキスおよび酵母エキス)を利用したねり製品(ニギス製品)を開発し,その品質を市販製品(対照)のそれと比較した.
1)官能評価では,ニギス製品は対照に比べ,見た目の好ましさはやや劣るが,うま味はほぼ同じであり,弾力感や好ましい魚の風味が強かった.
2)ニギス製品の色は魚醤油の添加の影響で対照のそれに比べ,L*が低く,b*が高かった.前者のゲル物性(破断強度と破断凹み)は,後者のそれらよりも大きかった.
3)ニギス製品の遊離アミノ酸組成では,特定のアミノ酸に偏りが無く,アミノ酸の種類による濃度差が対照に比べて小さかった.しかし,対照の遊離アミノ酸組成は化学調味料が添加されているため,GluおよびGlyが大部分であった.
4)ニギス製品には対照と同様に,うま味に関与するAMP, IMPおよびGMPが検出された.官能評価でニギス製品と対照のうま味が同程度と感じられたのは,主にこれらAMP, IMPおよびGMPとグルタミン酸との相乗効果によると考えられた.
5)ニギス製品の揮発性成分と対照のそれとは異なり,前者からは,ソルビン酸や2-メチルチオフェンが検出されず,イソバレルアルデヒド,2-メチルブタナール,フェニルアセトアルデヒドおよびフルフリルアルコールのようなニギス魚醤油に含まれる成分が検出された.
6)微生物試験では,真空包装したニギス製品を5℃で40日間保管しても一般生菌数が102cfu/g以下,大腸菌群,サルモネラ,黄色ブドウ球菌および腸炎ビブリオも陰性であった.

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© 2007 日本食品科学工学会
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