日本食品科学工学会誌
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嚥下困難者用食品の咽頭部での超音波による流速比較
長谷川 温子中澤 文子熊谷 仁
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2008 年 55 巻 11 号 p. 541-548

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抄録

超音波パルスドップラ法を用いて,被験者9人について咽頭部での流速分布の測定を行い,嚥下困難者用食品が誤嚥防止に有効である理由を明らかにした.すべての被験者で最大流速に2倍以上の差がある水とヨーグルトを基準にして,市販の嚥下困難者用食品であるトロミ調整食品,嚥下食について測定した.嚥下困難者用食品はヨーグルトに近い流速分布を示し,誤嚥の危険性が低いことが定量的に確かめられた.トロミ調整食品は添加濃度のよって最大流速が変わることが明らかになり,このため嚥下困難の程度に適した濃度に調整して誤嚥を防止できると考えられた.嚥下食は嚥下食レベルに関わらず最大流速が小さいことが示された.誤嚥防止には最大流速を小さくすることが有効であり,最大流速と動的粘弾性には相関があった.貯蔵弾性率Gprime;が100Pa以上,動的粘性率ηprime;が1Pa・s以上のゾル・ゲルでは最大流速が小さく,誤嚥の危険性が低いと判断することができた.市販の嚥下困難者用食品について動的粘弾性により誤嚥の危険性・安全性を推測できることが示された.誤嚥防止を目的とした食物を得るためには,最大流速が小さくなるように動的粘弾性を指標にして物性を調整した食物が有効であると考えられた.

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© 2008 日本食品科学工学会
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