日本食品科学工学会誌
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ブナシメジ由来ポリテルペンのHL-60白血病細胞におけるアポトーシス誘導機構
水本 裕子大野木 宏水谷 滋利榎 竜嗣浅田 起代蔵杉元 康志加藤 郁之進
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2008 年 55 巻 12 号 p. 612-618

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抄録

ブナシメジ(Hypsizigus marmoreus)の酢酸エチル抽出物には強い抗腫瘍作用があり,培養がん細胞にアポトーシスを誘導すること,その活性成分はブナシメジに特有のポリテルペン(hypsiziprenol A9)であることをこれまでに明らかにしてきた.
今回,我々はhypsiziprenol A9の抗腫瘍作用をさらに解明するためにアポトーシス誘導作用について詳細な検討をおこなった.
hypsiziprenol A9は種々の培養がん細胞の増殖を強く抑制した.hypsiziprenol A9をHL-60(ヒト前骨髄性白血病細胞)に添加して4時間培養すると核の断片化が観察された.また,アガロースゲル電気泳動によってDNAラダーが検出され,フローサイトメトリーを用いた細胞周期解析によって経時的なhypodiploid細胞の増加が認められた.続いて,カスパーゼの活性を評価したところhypsiziprenol A9によって濃度依存的なカスパーゼ-2,-3,-8,-9の活性化が認められた.さらに,hypsiziprenol A9で処理したHL-60細胞において,ミトコンドリアの膜電位の低下が認められた.
以上の結果から,hypsiziprenol A9はミトコンドリア膜電位の低下とカスパーゼの活性化を介してHL-60細胞にアポトーシスを誘導することが明らかとなった.

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© 2008 日本食品科学工学会
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