日本食品科学工学会誌
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脂肪酸塩誘導β-ラクトグロブリンゲルに対する魚肉水溶性タンパク質の物性改変効果
太田 尚子増田 宜子
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2008 年 55 巻 4 号 p. 143-150

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抄録

魚肉水溶性タンパク質濃縮物(WSPC)は不均質で水分散性の乏しいサスペンジョンであるが,脂肪酸塩を添加し室温でインキュベーションすることによりタンパク質二次構造の変化が認められた.脂肪酸塩誘導ゲル形成能を有するβ-LGとの1 : 1の混合系は常温下で保水性のある柔らかいゲルを形成し,それはβ-LG単独系に比べてより線形範囲の広い均質なゲル状凝集体であることが示唆された.混合タンパク質系におけるWSPCの役割はゲルネットワーク(ゲルの骨格)の構築ではなくβ-LG分子間力を弱め,脂肪酸塩・β-LG複合体と相分離することなく相まって系全体の乳化効果を高めることであると考えられる.本研究により,脂肪酸塩誘導食品タンパク質ゲルに新たなテクスチャーを付与するなどWSPCのテクスチャーモディファイヤーとしての付加価値が明らかになり,未利用タンパク質資源の1つであるWSPCの利用拡大の可能性が示された.

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© 2008 日本食品科学工学会
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