2010 年 57 巻 11 号 p. 464-471
本研究では,未利用摘果みかん果皮を用いて超臨界抽出実験を行い,得られた抽出挙動に対して動的抽出モデルを適用することで希少天然成分の溶解度を推定することを目的とした.はじめに,溶解度データの報告例があるβ-カロテンを対象とし文献値との比較を行ったところ,推定した溶解度は文献値と良好に一致していた.続いて,これまでに溶解度データの報告のないα-カロテン,ノビレチンおよびタンゲレチンにおいて方法論を適用させ,これらの物質の溶解度を推定した.いずれの溶質においても推定した溶解度は,温度およびCO2密度に対する依存性を表現していた.以上より,β-カロテンの溶解度が文献値と一致したこと,また分子量が同じで二重結合の位置が異なるα-カロテンとβ-カロテンの溶解度がほぼ一致したことは,本モデルによる溶解度推定が妥当であることを示唆しており,希少天然成分に対して本推定法の有用性が示唆された.