日本食品科学工学会誌
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固体分散ペーストの咀嚼・嚥下に及ぼす摂食量の影響
佐川 敦子金子 仁美寺島 真美恵志賀 清悟森高 初惠
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2010 年 57 巻 12 号 p. 503-516

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抄録

咀嚼・嚥下機能低下者に対応する食品の基礎的研究として,固体分散ペーストの摂食量が咽頭部通過時の食塊の移動速度に与える影響について超音波パルスドップラ法,嚥下造影法および官能評価により検討し,以下の結果を得た.
機器測定においてはキサンタンガムペースト添加を除く他の試料において摂食量が増加すると硬さは高くなる傾向がみられた.官能評価においてはグアーガム,キサンタンガムペースト添加試料は摂食量の影響を受けにくかったが,摂食量が増加すると付着しやすさの評価は高くなった.
食塊の最大移動速度は5回咀嚼,30回咀嚼ともに,水添加,澱粉ペースト添加は,摂食量が増加するに従って速くなる傾向がみられ,摂食量の影響を受けやすい試料であったが,グアーガム,キサンタンガムペースト添加試料は,摂食量に影響を受けず,ほぼ一定の速度であった.通過時間においては,食塊が液体的な場合は摂食量の増加に伴い通過時間が長くなる傾向がみられたが,食塊が固体的で粘稠な場合は,液体的試料よりも摂食量増加の影響を受けにくかった.固体分散ペーストの摂食量の影響は,添加するペーストの力学特性値が関与する可能性が高いと推察された.

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© 2010 日本食品科学工学会
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