日本食品科学工学会誌
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技術論文
スイゼンジナ色素の特性と新規食用天然色素としての利用
清水 康弘今田 隆文大野 友道張 慧利下村 講一郎
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2010 年 57 巻 12 号 p. 539-545

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抄録

今回の検討で,スイゼンジナ色素はアントシアニン色素の中でも,極めて耐光性・耐熱性に優れた色素であり,一般にアントシアニン色素の退色が著しい中性に近いpH域においても高い安定性を示す色素であることが明らかになった.また,実際の飲料に応用した際にも高い安定性を示した.これまでにもセイヨウアサガオ,キキョウなどに高度にアシル化され,安定性に優れたアントシアニンが含まれていることが報告されているが10) ,これらは食経験の無い花弁に含まれているものである.一方,スイゼンジナは本邦において古くから伝統野菜として食されており,さらに今回示したように復帰突然変異原性を持たないことから,安全でイメージの良い食用天然色素として利用できる可能性が高いものと考えられる.
スイゼンジナ色素の色調はアカキャベツ色素およびムラサキイモ色素に比較的近いものであった.2009年の食品添加物の国内市場において,アントシアニン色素に占めるアカキャベツ色素の割合は約27%,ムラサキイモ色素は約16%である15) .市場において大きな割合を占める両色素に近い色調を有することから,新規食用天然色素として大きな可能性が期待できる.
以上のように,スイゼンジナは優れたアントシアニン色素の原料植物として利用できることが示唆された.しかしながら,スイゼンジナは本研究で比較対象としたアカキャベツ等に比べて色素含量が低いという問題がある.この課題の解決に向けて,著者らはスイゼンジナアントシアニンの生合成に関与する遺伝子解析にも着手している16) 17) .これによって,スイゼンジナのアントシアニン産生メカニズムを解明し,効率的なスイゼンジナアントシアニンの蓄積を達成することで,本色素の産業利用が可能となることが期待される.

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© 2010 日本食品科学工学会
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