日本食品科学工学会誌
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凍結・解凍処理した秋サケの筋肉で生じるプロテオリシスが色調に及ぼす影響
秋野 雅樹武田 忠明今村 琢磨瀧波 憲二高橋 是太郎
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2010 年 57 巻 3 号 p. 100-106

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抄録

凍結・解凍処理した秋サケの筋肉で起こるプロテオリシスが色調に及ぼす影響を調査することを目的とした.また,ブナ度合および雌雄別の秋サケの自己消化活性を測定し,カロテノイド量と自己消化活性の関係より肉色から肉質軟化の起こりやすい個体判別の可能性についても検証した.
秋サケ筋肉の自己消化活性は,ブナ度合が高まるにつれ上昇し,雄よりも雌の方が高い傾向を示した.カロテノイド量と自己消化活性の関係を調べた結果,雄では負の直線関係が認められたが,雌では認められなかった.そのため雄では肉色から肉質軟化の起こりやすさをある程度推測できる可能性はあるが,雌では困難であると考えられた.
凍結・解凍処理した秋サケにおいて,高い自己消化活性を有する個体では,筋肉がプロテオリシスを受けて肉質が軟化し,軟化した筋肉組織は未凍結時と比較して光散乱の変化が確認された.この軟化肉の色調をCIELAB表色系で評価した場合,未凍結時よりも明度の著しい増加と色相の変化が認められた.よって,凍結・解凍処理に伴いプロテオリシスを受けた秋サケ筋肉は,秋サケ特有の赤紅色と透明感が損失した肉色に至ると結論された.
本研究は,新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業「サケ輸出促進のための品質評価システムの開発と放流技術の高度化」の助成を受けて行われた.

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© 2010 日本食品科学工学会
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