日本食品科学工学会誌
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アガロオリゴ糖によるヘムオキシゲナーゼ-1誘導機構と抗炎症作用
榎 竜嗣田辺 雅茂霜村 真弓大野木 宏
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2010 年 57 巻 4 号 p. 157-162

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抄録

寒天の主成分であるアガロースは酸により容易に加水分解され還元末端にAh-Galを持つアガロオリゴ糖が生成する.アガロオリゴ糖はヘムオキシゲナーゼ-1の誘導を介して抗炎症作用を発揮することが示唆されている.
今回,我々はアガロオリゴ糖の抗炎症作用をさらに解析するために,アガロオリゴ糖によるヘムオキシゲナーゼ-1誘導が転写因子Nrf2を介するかどうか,またLPS刺激NF-κBの活性化をアガロオリゴ糖が抑制するかどうか,またその時のヘムオキシゲナーゼ-1の関与について試験した.
アガロオリゴ糖はその鎖長によらずヘムオキシゲナーゼ-1産生を誘導した.また,RAW264.7細胞においてsiRNAを高効率低毒性で導入できる試験系において,Nrf2 siRNA遺伝子をノックダウンしたときにアガロビオースによるヘムオキシゲナーゼ-1遺伝子発現誘導が抑制されることが確認され,Nrf2の関与が示された.また,LPS刺激NF-κBの活性化をアガロビオースはある程度抑制したが,この効果はHO-1 siRNAによってヘムオキシゲナーゼ-1遺伝子をノックダウンしても影響がなかった.
以上の結果から,アガロオリゴ糖はNrf2の活性化によりヘムオキシゲナーゼ-1遺伝子発現を誘導するが,一方でこのヘムオキシゲナーゼ-1遺伝子発現誘導非依存的にNF-κBの活性化を部分的に抑制し,抗炎症作用を発揮することが示唆された.

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