日本食品科学工学会誌
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技術論文
健康食品中の総アスタキサンチンのHPLC定量法
小河原 雅子井野 曜子吉田 幹彦菱山 隆五十嵐 友二
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2010 年 57 巻 5 号 p. 205-214

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抄録

ヘマトコッカス藻由来エステル型ASTを含有する加工食品中の総AST量を測定する目的で,コレステロールエステラーゼによる酵素分解後,高速液体クロマトグラフ法にて定量する方法を検討した.
この結果,
(1) エステル型ASTを加水分解するため,抗酸化剤としてエトキシキン存在下,アセトンおよびpH7緩衝液中でPseudomonas fluorescens由来コレステロールエステラーゼを37℃, 120分間反応させる条件を確立した.なお,本条件下で加水分解後の遊離ASTが安定なことを確認した.
(2) 約0.01~4μg/mlの濃度におけるAST溶液の直線性は,相関係数0.9999以上と良好であった.
(3) エステル型AST含有食品に対し,本試験法の相対標準偏差は2%以下かつ添加回収率96.9~101%であり,良好な併行精度および真度を確認した.
(4) 試験溶液を2種類のHPLC条件で測定した結果が同等であったことおよび健康食品試験溶液のLC/MS測定によりHPLC分離成分がアスタキサンチンのみであったことから,本法の特異性が確認された.
(5) 定量下限は,クロマトグラムのS/N比より0.006mg/100gと推定された.ただし,種々の加工食品中のマトリックス効果を考慮し,0.02mg/100gと設定することが妥当と考えられた.
以上より,本試験法によって加工食品中のエステル型ASTを含む総ASTの定量が可能であることが示された.また,ヘマトコッカス藻由来以外のエステル型AST試料にも適用できる可能性が示唆された.

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© 2010 日本食品科学工学会
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