日本食品科学工学会誌
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炊飯麦の保温による褐変とフラバノール成分の関係
神山 紀子長嶺 敬村田 容常
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2010 年 57 巻 9 号 p. 372-379

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抄録

炊飯麦粒を保温すると経時的にa*値が増加したが,これは粒の水分に影響された.炊飯麦の褐変におけるフラバノールの影響を明らかにするため,搗精麦を試験管内で炊飯後70℃で保温し,炊飯直後と保温後の凍結乾燥粉のa*値の変化量(Δa*)を指標とした.炊飯麦のフラバノールは保温の過程でΔa*の増加と並行して経時的に減少し,その速さはPDB3>PCB3>(+)-カテキンの順であった.フラバノール含量をジメチルアミノ桂皮アルデヒド法で測定し10品種間で比較したところ,搗精麦のフラバノール含量の多い品種は炊飯直後や保温後に残存するフラバノール量,保温中のフラバノール減少量が多かった(それぞれr=0.986, 0.968, 0.921).炊飯麦の褐変は搗精麦のフラバノール含量(r=0.716)や保温中のフラバノールの減少量(r=0.838)と高い相関があり,プロアントシアニジン欠失遺伝子をもちフラバノールを殆ど含まない6系統の炊飯麦の褐変は著しく低かった.以上の結果より,フラバノールが炊飯粒の褐変の主原因成分であると考えられた.

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© 2010 日本食品科学工学会
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