日本食品科学工学会誌
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小麦粉焼成菓子の吸湿時の硬化と多重層収着水分との関係
肥後 温子和田 淑子佐藤 之紀
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2012 年 59 巻 11 号 p. 562-571

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抄録

生地の配合割合を変えてガスオーブン加熱法とマイクロ波併用加熱法でクッキー様焼成品を作製し,調湿保存して力学特性値の変化を調べたところ,マイクロ波加熱を含めた糊化度の高い試料では吸湿時にさらに硬化が助長されて最大破断強度,総エネルギー値が大きくなり,強靭な硬さになるとともに硬化領域が拡大する現象がみられた.
吸湿時の硬化現象と水のクラスとの関わりを吸着および脱着時の収着曲線を解析して調べたところ,脱着時のWmMC量の方が力学特性値との相関が高く,力学特性値の変化と水のクラス変化とがよく一致することがわかった.
力学特性値とWmMC量との間に高い相関関係が認められたことから,デンプン性食品が吸湿後に強靭な硬さを保持し硬化領域が拡大する要因の一つは糊化に伴う結合水量の増加である可能性が大となった.
糊化した試料ほどWmMC量が多く,吸湿時に脆性破断状態が保持されるR.H.7.6~43 %はすべてWm領域に入ること,R.H..56 %から延性破断となり,糊化度が高い試料ではR.H.56~88 %まで硬化領域が拡大すること,硬化した領域はすべてMC領域に入ることが明らかになった.

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© 2012 日本食品科学工学会
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