日本食品科学工学会誌
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タピオカ澱粉配合麺の力学特性と若年者および高齢者による咀嚼特性
江口 智美吉村 美紀神山 かおる
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2012 年 59 巻 6 号 p. 268-278

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抄録

エステル化加工タピオカ澱粉を6%配合したうどんの,高齢者向け食品としての適性を検討した.試料には,小麦粉麺を10分間ゆでたMG10,タピオカ澱粉配合麺を10分間ゆでたCA10および13分間ゆでたCA13の,3種類のゆで麺を用いた.麺の力学特性,咀嚼特性および嗜好性の評価を,水分含量,形状変化,貫入試験,若年者(23.3±/2.7歳)と高齢者(75.8±/7.3歳)を対象とした咀嚼筋筋電位測定および官能評価により行った.
(1) 麺にタピオカ澱粉を配合することで,滑らかでやわらかな弾力が広く分布するもちもちとしたテクスチャーが付与された.若年者と高齢者の両世代において,食べやすさと嗜好性が高まる傾向にあった.
(2) タピオカ澱粉配合麺のゆで時間を長くすることで,水分含量が増加した.麺線全体的にやわらかく,こしも弱くなり,早い段階で噛み切りやすい食べやすさのさらに向上した麺となった.
(3) 高齢者と若年者では,咀嚼特性と嗜好性に違いが見られ,高齢者は全試料とも長時間の咀嚼を行っていた.また,高齢者では,CA13が最も食べやすく好ましいと評価された.若年者では,高齢者と同様に,CA13が最も食べやすいと評価されたが,最も好まれたのは,硬さやこしによる噛みごたえのあるCA10であった.うどんのおいしさの評価において重要な要素は,高齢者においては,水分含量の高さによる食べやすさであり,若年者においては,硬さやこしによる噛みごたえであることが示唆された.
(4) 高齢者に最も食べやすいと評価されたCA13についても,筋電位振幅および貫入力変化率からある程度の噛みごたえが維持されたことが示唆された.したがって,うどんにおいては,CA13は,食べやすくかつ無理なく高齢者の咀嚼機能維持にも役立てられる,高齢者向け食品としての適性があることが示唆された.

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