日本食品科学工学会誌
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技術論文
コマツナの乾燥への遠赤外線の利用
岡本 慎太郎折笠 貴寛桑嶋 学人菰田 俊一齊藤 順一郎矢野 歳和村松 良樹小出 章二椎名 武夫田川 彰男
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2012 年 59 巻 9 号 p. 465-472

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抄録

コマツナを試料として,遠赤外線乾燥および熱風乾燥の試料品質変化および乾燥過程における消費電力量について調査したところ,以下の知見を得た.
(1) 乾燥終了時の試料表面温度を同じにすれば,遠赤外線乾燥および熱風乾燥の乾燥速度は同程度になり,含水率変化はいずれの乾燥法においても減率乾燥第一段で表されることが示された.
(2) 遠赤外線乾燥は乾燥後のL-アスコルビン酸残存率が熱風乾燥のそれと比べて有意(p < 0.05)に大であり,遠赤外線乾燥法はL-アスコルビン酸分解を抑制する可能性があることが示された.
(3) 色相角の黄色方向への変化は,β-カロテンおよびルテインの濃縮による可能性が示唆された.
(4) 遠赤外線乾燥は単位水分の蒸発に必要な消費電力量が熱風乾燥のそれと比較して有意(p < 0.01)に少なく,遠赤外線乾燥法を用いることで,熱風乾燥法よりも17%程度小さい電力量で乾燥青果物を製造できる可能性が示された.
今後,コマツナの遠赤外線乾燥における最適乾燥条件を検討する場合には,乾燥温湿度・風速,酵素活性などが乾燥速度や品質変化に及ぼす影響を加味した検討が必要になると考えられる.

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© 2012 日本食品科学工学会
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