日本食品科学工学会誌
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連続蒸気炊飯装置を用いて炊飯した米飯の食味と保存性
竹満 初穂林 康寛佐古 圭弘北村 進一
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2013 年 60 巻 11 号 p. 628-634

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抄録

大量炊飯が可能な連続蒸気炊飯装置を開発し,この装置を用いて炊飯した米飯の物理化学的な測定,および官能評価を実施し,蒸気炊飯米の特徴を明らかにした.比較には,IH炊飯器を用いて炊飯した通常炊飯米を用いた.表面色,物性,糊化度の測定,および炊飯米断面のヨウ素デンプン反応の顕微鏡観察を行った.さらに炊飯過程で流出する成分のゲルろ過分析を行った.また炊飯直後および冷蔵(5°C)保存後に官能評価を実施し食味を比較した.結果は以下の通りである.
1)白色度は蒸気炊飯米で有意に高かった.
2)物性測定では,蒸気炊飯米は老化に伴う経時的な硬さの上昇,粘りの低下が少なかった.
3)糊化度は,蒸気炊飯米では冷蔵保存後も,通常炊飯米に比べ高く保たれていた.
4)ヨウ素呈色させた炊飯米断面の顕微鏡観察により,通常炊飯米は青紫色,蒸気炊飯米は赤紫色に呈色する傾向がみられた.また蒸気炊飯米では細胞の形状が比較的規則正しく保たれていたが,通常炊飯米ではその構造が変化していた.
5)蒸気炊飯工程で米から流出する成分をゲルろ過分析により調べたところ,その流出物は主にアミロースであることが確認された.
6)官能評価において,冷蔵保存後の蒸気炊飯米は評価が高く,老化せずおいしい状態が保持されていた.
これらの結果から,連続蒸気炊飯米は,炊飯過程で老化の原因となるアミロースが一部流出していることにより,冷蔵保存してもおいしさが保たれることが明らかとなった.

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© 2013 日本食品科学工学会
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