日本食品科学工学会誌
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サトウキビ糖蜜の抗酸化活性に及ぼす加熱加工の影響
氏原 邦博吉元 誠和田 浩二高橋 誠須田 郁夫
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2013 年 60 巻 4 号 p. 159-164

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抄録

本研究では,異なる温度および時間で糖蜜の加熱加工を行い,処理された糖蜜の褐色度,DPPHラジカル消去活性およびポリフェノール様活性を評価した.糖蜜の褐色度は120°C∼160°Cの加熱によって,非加熱糖蜜よりも増加した.加熱温度が120°Cおよび140°Cの場合では加熱時間の経過とともに褐色度は増加し,60分処理で非加熱糖蜜の約9.5倍を示した.加熱温度が160°Cでは,加熱開始から10分後に褐色度は急激に増加し,20分後には非加熱糖蜜と比べて約16.7倍と最も高い値を示した.糖蜜のDPPHラジカル消去活性も120°C∼160°Cの加熱によって,非加熱糖蜜よりも増加し,120°C,50分加熱,140°C,10分加熱,および160°C,10分加熱した糖蜜は非加熱糖蜜と比べて4倍のDPPHラジカル消去活性を示した.糖蜜のポリフェノール様活性も120°C∼160°Cの加熱により増加し,その増減はDPPHラジカル消去活性それと類似していた.これらの結果から,加熱糖蜜について,加熱によって生成したポリフェノール性化合物がラジカル消去活性および褐変に大きく関与していることを明らかにした.その中でも,160°Cの加熱では,褐色度のより高いポリフェノール性化合物あるいは他の褐変に関与するメラノイジンやカラメル反応物質等も総合的に関与していると考えられた.さらに,加熱加工によって最もポリフェノール様活性の増加を認めた糖蜜についての抗変異原性の増加も確認した.即ち,本研究によって,加熱糖蜜のラジカル消去活性への褐色物質の関与および抗変異原性を明らかにするとともに,本加熱加工が糖蜜の食品機能性を向上させる加工技術として有用であることが示唆された.

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© 2013 日本食品科学工学会
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