日本食品科学工学会誌
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たらこおよび辛子明太子の製造・保管中の硝酸還元菌による亜硝酸根の増加
相馬 さやか金岡 正裕中村 誠田中 賢二
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2013 年 60 巻 6 号 p. 270-277

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抄録

冷蔵保管中に亜硝酸根値が上昇したたらこより,亜硝酸生成菌を11株分離した.16SrDNA遺伝子による相同性検索の結果,それらの一部はVibrio rumoiensisHalomonas marinaCobetia属と非常に高い相同性を示した.また亜硝酸生成能力が異なる3株について,亜硝酸生成に最適な培養条件を検討した結果,培養温度20~30℃,塩分3~5 %が適していた.上記3株をたらこおよび辛子明太子に接種した再現試験の結果,Vibrio属に属する菌株No. 19接種区で亜硝酸根値の増大が確認された.一方,辛子明太子の各原料について細菌数と硝酸根値の測定を行なったところ,検査した輸入原卵全てから亜硝酸生成菌が検出され,原料によっては1 gあたりCFUで平均340個もの亜硝酸生成菌が検出された.また,原卵を除く全ての原料から硝酸根が検出され,とくに唐辛子は220 ppmもの硝酸根を含有することが分かった.以上の結果より,たらこおよび辛子明太子の冷蔵保管に見られる亜硝酸根値の上昇は,原卵に付着していた低温性の亜硝酸生成菌が他の原料に由来する硝酸イオンを還元することが原因である可能性が示唆された.従って今後,工程中に亜硝酸が生成するリスクの軽減として,原料の洗浄,環境の清掃,使用する原料や食品添加物の硝酸値チェック,レシピの見直しなどが重要になるものと考えられる.

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© 2013 日本食品科学工学会
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