日本食品科学工学会誌
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技術論文
ウンシュウミカン加工副産物の抽出物から溶媒への溶解性の差を利用してβ-クリプトキサンチンを精製する方法
小川 一紀尾﨑 嘉彦杉浦 実
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2013 年 60 巻 9 号 p. 498-508

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抄録

ウンシュウミカン搾汁工程の篩過や遠心処理で発生するパルプは,β-クリプトキサンチンの有用な抽出原料となる.そこで,これらを原料にして,低コストで簡便なβ-クリプトキサンチンの精製工程を開発した.まず,酵素分解によりパルプを減量し,水分を遠心分離で除き,沈殿中の水分をアセトンで置換することで,乾燥せずにヘキサンでβ-クリプトキサンチンを含む抽出物が効率よく得られることを示した.エステル型β-クリプトキサンチンを含有するヘキサン抽出物を得た後,ヘキサン,アセトン,エタノール,ヘキサン/エタノール混合溶媒への成分の溶解性により,可溶部と不溶部に分け,ヘキサン可溶部,アセトン可溶部,エタノール不溶部,ヘキサン/エタノール混合溶媒不溶部を順次回収することで,エステル型β-クリプトキサンチンを高濃度化することができた.この高濃度含有物をアルカリ加水分解し,有機溶媒層から遊離型β-クリプトキサンチンを結晶として得ることができた.また,ウンシュウミカン果皮のヘキサン抽出物は,水とともに精油を減圧溜去した後,エタノール不溶部を得て,これをアルカリ加水分解後,有機溶媒層を簡易なシリカゲルカラムクロマトグラフ分離に付し,遊離型β-クリプトキサンチンを結晶として得ることができた.カキ果皮も,同様の操作でカロテノイドを高濃度化して,加水分解で高濃度の遊離型カロテノイド混合物を得ることができた.

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© 2013 日本食品科学工学会
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