日本食品科学工学会誌
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ツルアラメに含まれる糖質,アミノ酸およびポリフェノールの季節変化
小田桐 慎一郎加藤 陽治
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2014 年 61 巻 7 号 p. 268-277

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抄録

青森県の大間崎にて水深3~4メートルに生息しているツルアラメを2008年3月から2009年2月までの間ほぼ毎月採取し,それぞれの試料に含まれる糖質,アミノ酸,ポリフェノールの含有量の季節変化を調べた.
(1)ラミナラン含有量は8月に最大となり(約200mg/g乾燥質量),それ以降,減少した.最も少ないのは3月(約12mg/g乾燥質量)であり,最大値との間に16倍の差があった.ラミナラン含有量は乾燥質量の1~20%の間で季節による変化があった.
(2)アルギン酸は季節による含有量の変化が少なく,約200~300mg/g乾燥質量含有されていた.これは他の褐藻類と遜色ない量であり,新たなアルギン酸原料としての可能性が示唆された.
(3)ツルアラメには,キシロース・マンノースの割合が多いツルアラメ特有のフコイダンとG-フコイダンの2種のフコイダンの存在が確認された.これらの季節による大きな変動は見られなかった.
(4)主要遊離アミノ酸はアラニン,アスパラギン酸,グルタミン酸であった.この中でも特に甘味アミノ酸の一つアラニンの含有量が多く,5月~6月に最大値の12mg/g乾燥質量,8月~11月に最小値となる3mg/g乾燥質量であった.アスパラギン酸,グルタミン酸は季節による変化は少なかった.ツルアラメのグルタミン酸含有量はコンブの約1/10であり,コンブのように旨味成分含有海藻としての利用可能性は極めて低いと考えられる.
(5)ツルアラメのポリフェノール含有量は夏(8月)採取のツルアラメ(30mg/g乾燥質量)が冬(2月)採取のツルアラメ(10mg/g乾燥質量)の約3倍含まれていた.

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