日本食品科学工学会誌
Online ISSN : 1881-6681
Print ISSN : 1341-027X
ISSN-L : 1341-027X
技術論文
日本茶の商品情報表示に関する消費者意識の調査と考察
林 宣之氏原 ともみ岩崎 邦彦
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 62 巻 1 号 p. 41-49

詳細
抄録

本研究では,消費者が望んでいる日本茶の商品情報表示について焦点を当てた.全都道府県の一般消費者を対象にし,インターネット上でアンケート調査を実施したところ,緑茶の茶葉を購入する際に最も重要と考えるものとして,性別と年齢によっては価格という回答が最も高い割合を占める場合も見られたが,全体では品質との回答が最も多かった.品質に関する商品表示への期待は高く,味や香り等の感覚関連情報に対する要望が強いことが明らかになった.ペットボトル飲料の場合においても,味や香りの表示への期待は同様に高いが,加えて生産地表示に対する要望が増加した.ほうじ茶の場合も,緑茶と類似した傾向が見られたが,購入の際に価格を重視する割合が増加した.茶葉を購入する際の品質情報への関心やその表示に対する期待は,専門店,百貨店,通信販売を利用する場合において特に高いため,感覚関連情報の表示はそのような消費者に対して有効であると考えられた.茶葉の購入場所として最も多くの消費者が利用するスーパーマーケットは,感覚関連の品質表示を適用するために最も効果的な市場のひとつであると思われるが,その利用者は,専門店,百貨店,通信販売の利用者に比べ,茶や品質への関心が低下する傾向があった.したがって,スーパーマーケットでの販売の際に品質表示の効果を得るためには,日本茶の魅力を伝え,関心を呼び起こす取り組みを併せて行う必要があろう.また,表示方法の分かり易さは,各々の消費者が重要と考える要素によって異なるため,単一の方法によって全ての人を満足させることは難しいが,ターゲットとなる消費者層が限定できる場合には,その群の多数派に合わせることによって,表示の効果を一層高めることが可能と考えられた.
これまでにも緑茶に関する消費者調査は存在したが,商品表示について消費者の意識を調査したのは本研究が最初である10) .日本茶の商品購入に際して消費者が知りたい情報や利用する購入先によって消費者の茶に対する意識が異なっているという今回明らかになった事実は,商品情報を効果的に提供する方法を考えるときに重要な指針となるに違いない.

著者関連情報
© 2015 日本食品科学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top