日本食品科学工学会誌
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研究ノート
小麦澱粉のリゾレシチンの存在形態
塩田(原田) 良子石永 正隆釘宮 正往杉山 寿美
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2015 年 62 巻 3 号 p. 159-164

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抄録

小麦澱粉のstarch lipidであるLPCは,水飽和ブタノールにより,常温では抽出されず,熱水中で殆ど抽出される.しかし,糊化状態になると常温による抽出量は熱抽出量より高かった.また,常温抽出したLPCのリノール酸の割合はパルミチン酸より高く,熱抽出したLPCのパルミチ酸の割合は約50%でリノール酸の割合より高かった.このように常温抽出されやすいLPCをchangeable LPC (Ch-LPC),熱抽出されるLPCをstable LPC (St-LPC)とし,生澱粉から常温抽出されるLPCをsurface LPC (Su-LPC)とした.
糊化した糊液の温度を95°Cから50°Cに低下させると糊液はゲル化し,ゲルのLPCの熱抽出量は常温抽出量より再び高くなった.ゲル化により,常温抽出されていたCh-LPCあるいはSu-LPCがSt-LPCに変化したかどうかを調べるためにゲル糊液を95°Cまで再加熱し,その糊液のLPC量とLPCの脂肪酸組成を調べた.その結果,常温抽出のCh-LPC量が熱抽出量より高くなった.一方,熱抽出したSt-LPCのパルミチン酸の割合は約54%でリノール酸より高かった.これらは最初の糊化液の場合とほぼ同じ結果であった.以上の結果から,ゲル化あるいは再加熱過程において,Ch-LPCあるいはSu-LPCがSt-LPCに変化していないことが示唆された.

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© 2015 日本食品科学工学会
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