日本食品科学工学会誌
Online ISSN : 1881-6681
Print ISSN : 1341-027X
ISSN-L : 1341-027X
研究ノート
味認識装置での測定に適した植物油脂成分抽出法の検討
糸山 隆一石原 克之杉原 直子佐久間 塁羽藤 公一古賀 秀徳
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 62 巻 9 号 p. 454-460

詳細
抄録

植物油脂を原料として使用する食品加工企業においてその品質評価は重要であり,AV,POV,カルボニル価などの測定法が確立されている.一方,味に関しては,揚げ加工された製品の官能評価が一般的であり,植物油脂自体の味を少量で,人に頼らず,客観的に評価できる方法が求められている.そこで本研究では植物油脂から味覚センサーに反応する成分をエタノールで抽出する方法を検討し,味認識装置を用いた植物油脂の識別と分類を試みた.
まず,サフラワー油,ナタネ油,パームオレイン油,米サラダ油,圧搾米油,大豆油の6種類の植物油脂を用いて100% (v/v)エタノール抽出法,70% (v/v)エタノール抽出法,2段階希釈エタノール抽出法により抽出液を調製し,味認識装置で測定した.8つの味覚項目の測定誤差率(m2)が50%以下の場合に「識別できた味覚項目」とした.その結果,2段階希釈エタノール抽出法において6項目と最も良好な結果が得られた.さらに,同じ植物原料由来でより近縁な油種として3種の米油(米サラダ油,米胚芽油,圧搾米油)の識別方法を検討したところ,2段階希釈エタノール抽出法の後半にろ過工程を追加することにより再現性が向上することが分かった.
この2段階希釈エタノール抽出ろ過法により,前述の6種類にゴマ油,オリーブ油を加えた8種の植物油脂の分類を試みた.測定した8つの味覚項目の味評価値をクラスター分析した結果,官能に基づく油脂の風味のポジショニングイメージとよく一致した.一方,実験に供した油脂のAV,POVをクラスター分析した結果は味認識装置での結果と全く一致しなかった.
以上のことから今後,製油企業や食品加工企業などで味認識装置を官能検査に代わる新たな植物油脂の評価法として利用できる可能性が示された.

著者関連情報
© 2015 日本食品科学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top