日本食品科学工学会誌
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技術論文
大豆タンパク質添加エマルションの物性とそのエマルション特性を利用した食品の調製
江木 伸子平尾 和子廣瀬 理恵子斎尾 恭子村上 昌弘
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2016 年 63 巻 5 号 p. 225-235

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抄録

分離大豆タンパク質(SPI),酢,大豆油,水の乳化により調製した大豆タンパク質添加エマルションのレオロジー的性質を酢の添加量および添加順序を変えて調べた.その結果,部分的加水分解したSPIは,乳化後,酢を添加することにより,元のSPIに比べて,高い保形性および安定性と滑らかな物性を持つエマルションを調製できることがわかった.SPI,大豆油および酢と水の適当な配合比を調べるために,Schefféの単純格子計画法を適用して,10種類の配合比で作られるエマルションの物性を検討した.安定した保形性を持つ混合比は部分加水分解SPI ; 4.0∼16.7%,大豆油 ; 36.0∼55.0%,酢 ; 5.0%,水 ; 36.0∼45.5%の範囲にあり,これらは擬塑性流動を示した.チキソトロピー特性値,降伏値,粘稠性係数,流動性指数などの値は混合比により変わり,ホイップクリーム様,マヨネーズ様,クリームチーズ様などの乳化特性を示した.混合比が部分加水分解SPI ; 10.4%,大豆油 ; 42.3%,酢 ; 5.0%,水 ; 42.3%のエマルションは,それが大豆たん白利用食品として相応のタンパク質含量を持ち,平均粒子径や流動性指数など物性値が適当なことから後の実験に選択した.このエマルションに砂糖を添加すると,砂糖の添加量が多くなるに従いニュートン流動を示すようになり保形性は失われた.しかし,砂糖を加えて乳化してから,酢を添加することによりエマルションの形状の変化を抑制することができた.またこのように調製したエマルションは焼成することが可能になったので,焼成菓子やマヨネーズ様食品を試作した.これら実験を通じて,著者らは食材を添加する順序が顕著に,かつ,微妙に調製後のエマルションや食品の物性に影響することを認めた.

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© 2016 日本食品科学工学会
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