本研究は,低温スチーマーの加熱温度の違いが野菜中のアスコルビン酸含量に及ぼす影響と,真空調理および沸騰水処理と比較した際の低温スチーム加熱の特性を明らかにすることを目的とした.
60から90℃の温度条件で低温スチーム処理したサツマイモ,ブロッコリーおよびジャガイモの総AsAを測定した結果,いずれも低温で加熱することでその保持含量が高まった.サツマイモおよびブロッコリーでその傾向は顕著であった.
総AsA,還元型AsAおよびDPPHラジカル捕捉活性を指標に真空調理および沸騰水処理と比較した結果,低温スチーム処理は,沸騰水処理よりも,総AsA含量の保持が可能であったが,真空調理の方が還元型および抗酸化性も含めて保持効果が優れていた.
以上のことから,各野菜がもつ性質の違いでAsAの減少量に差はあるが,低温スチーム処理は,温度調整によりAsA残存量を高められるため,AsAの効率的な摂取に貢献する一次加工素材開発で有用な技術となる.更に,低温スチーマーは包装資材なしで,ある程度AsAを保持できるため,低コストで利用価値の高い技術と考えられる.