日本食品科学工学会誌
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ナチュラルチーズ香気における分岐鎖アルデヒド類の特性
稲垣 さつき藤川 誠二和田 善行熊沢 賢二
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2016 年 63 巻 9 号 p. 388-393

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抄録

ナチュラルチーズ香気における分岐鎖アルデヒド類の特性を検討し,以下の結果を得た.

(1)炭素数11∼16の分岐鎖アルデヒド類は,炭素数14で最小の閾値となり,さらに,閾値の低い領域では牛肉様の香調を示した.この結果から,複数の分岐鎖アルデヒドが存在する長期に熟成の進んだゴーダチーズの香気において,12-methyltridecanalが極めて重要な役割を果たす理由は,その特異的に低い閾値と牛肉様というユニークな香調によることを明らかにした.

(2)長期熟成が進むにしたがって分岐鎖アルデヒド類の含有量が増加した現象は,他の長期熟成を経て作られるナチュラルチーズについても観測された.従ってこの現象は,長期熟成工程を経て作られるチーズに幅広く観測される成分変化である可能性を推察した.

(3)チーズおよび各脂質画分の酸加水分解により生じる分岐鎖アルデヒド類の生成量を比較した.その結果,チーズにおける分岐鎖アルデヒド類生成のポテンシャルは極めて大きく,熟成が高度に進んだチーズ香気では,分岐鎖アルデヒド類の重要性が更に増す可能性を推定した.さらに,牛肉とは異なる新しいタイプの分岐鎖アルデヒド類前駆体が存在する可能性を推定した.

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© 2016 日本食品科学工学会
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