2017 年 64 巻 3 号 p. 132-138
著者らが保有する北海道で分離された独自の乳酸菌から,酸生成が期待できるホモ発酵乳酸菌Streptococcus salivarius ssp. thermophilusを選択し,培養特性を解析した結果,酸生成が緩やかであることが明らかになった.そこでpH調整剤としてクエン酸を併用することで乳酸酸性よるpH低下を補い,本乳酸菌をスターターとしてチーズ製造する製造条件を設定し,試作製造した結果,風味良好なモッツァレラチーズを製造する実用化条件を見出すことができた.本結果は,全国各地域で独自に分離される菌株で,育種改変などの厳しい選抜を経ずに野生株を実用へ応用する一つの道筋を示すものであり,地域ブランドの製品製造につながることが大いに期待される.