日本食品科学工学会誌
Online ISSN : 1881-6681
Print ISSN : 1341-027X
ISSN-L : 1341-027X
研究ノート
遠赤外線放射セラミックスコートした釜を用いた炊飯が米飯中の含水量と糖量変化に与える影響
桑田 和宏岩田 和佳今西 忠雄鐡見 雅弘中室 克彦
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 64 巻 7 号 p. 373-378

詳細
抄録

日本人の主食である米を,遠赤外線放射セラミックス粉末でコーティングした炊飯釜(セラ釜)で,水道水を用いて炊飯し,含水量と米の糖度への影響を調べた.その結果,セラミックス粉末をコーティングしていない対照釜と比較し,含水量に変化は見られないものの糖量の増加が見られた.この時,浸漬時間により,増加する糖の種類に違いがあり,浸漬しない場合には,セラ釜を用いた米飯で全糖量が約1.4倍になったが,米の重要な甘味成分であるグルコースは増加しなかった.しかし,30分浸漬した場合には,全糖量に大きな違いが見られなかったものの,セラ釜を用いた米飯でグルコースが約1.3倍になった(有意差無し).以上の結果から,セラ釜での炊飯は,炊飯条件を検討することで食味向上につながる可能性が示唆された.

セラ釜に1時間静置した純水は,対照釜で同様の処理を行った純水に比べ,蒸発速度が遅くなり,水の物理化学的性質に違いが生じている可能性が明らかになった.しかし,水道水では蒸発速度に差が見られなかったため,純水の結果との対応関係は今後の課題となった.

また,米から抽出した粗酵素をセラミックスで処理すると,50°C付近で,デンプンをグルコースに分解する酵素の活性が上昇した.炊飯中の温度変化には釜による差が見られなかったため,酵素活性の上昇が糖量の増加につながっている可能性が示唆された.

著者関連情報
© 2017 日本食品科学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top