日本食品科学工学会誌
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養殖ヒトエグサ由来ラムナン硫酸のヒアルロニダーゼ阻害機構
山元 裕太佐田 宏子森 健二大島 賢治高橋 芳弘満生 慎二柿原 秀己迎 勝也
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2017 年 64 巻 8 号 p. 429-436

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抄録

熊本県産養殖ヒトエグサ由来ラムナン硫酸の硫酸基がヒアルロニダーゼ阻害活性に及ぼす影響およびその阻害機構を検討した.硫酸基含有率20% (w/w)のラムナン硫酸を用い,ラインウィーバー=バーク式からヒアルロニダーゼ阻害様式は酵素の活性部位に直接作用する拮抗阻害であることが確認された.ラムナン硫酸の硫酸基含有率がヒアルロニダーゼ阻害活性に及ぼす影響を調べるために,硫酸基含有率20% (w/w)のラムナン硫酸の脱硫酸処理,過硫酸化処理により,硫酸基含有率が0.5,7,41% (w/w)のラムナン硫酸を調製し,硫酸基含有率20% (w/w)のラムナン硫酸を含め,各ラムナン硫酸の濃度を変えて,ヒアルロニダーゼ阻害試験を行った.その結果,ラムナン硫酸のヒアルロニダーゼ阻害率は硫酸基含有率の増加と共に高くなった.ラムナン硫酸とヒアルロニダーゼの混合により生成した白濁物質について,そのIR分析および1H-NMR分析結果から,この白濁物質はラムナン硫酸とヒアルロニダーゼの複合体であり,ラムナン硫酸中の硫酸基の負電荷とヒアルロニダーゼのリジン残基の正電荷のイオン相互作用により複合体が生成していることが示唆された.硫酸基含有率の高いラムナン硫酸ほど複合体生成率は上昇し,複合体を除去したろ液のヒアルロン酸分解率は低下した.すなわち,ラムナン硫酸はヒアルロニダーゼとイオン相互作用により水に不溶な複合体を生成し,ヒアルロニダーゼを不活性化することで,ラムナン硫酸のヒアルロニダーゼ阻害が発現していることが推察された.

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© 2017 日本食品科学工学会
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