日本食品科学工学会誌
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技術論文
インピーダンス計測によるレトルトパウチに封入した酵素処理牛肉の硬さの推定
羽倉 義雄岡本 拓海川井 清司
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2018 年 65 巻 9 号 p. 442-450

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抄録

本研究では,レトルトパウチに封入した酵素処理牛肉の硬さ(破断エネルギー)の変化をインピーダンス計測により捕捉する方法を検討した.パパイン酵素溶液処理前後のパウチ入り牛肉のナイキストプロットは,18900Hz付近から100000Hzの間では比較的滑らかな曲線状の変化を示した.また,酵素処理の有無により,同一周波数におけるインピーダンスの絶対値が異なっていた.そこで本研究では,安定した測定値が得られ,かつ,酵素処理中の牛肉の変化が明瞭に現れた24370Hzにおけるインピーダンスを用いることにより.酵素処理に伴う試料の状態変化を評価した.パパイン酵素溶液(0,0.5,1.0,1.5%)および失活酵素溶液に1分間浸漬した後パウチに封入した牛肉試料について,インピーダンスの経時変化を測定した.併せて同条件で調製した試料をパウチから取り出し,牛肉の破断エネルギー(硬さ)の経時変化をレオメータにより測定した.酵素濃度0%溶液および失活酵素溶液で処理した試料では,インピーダンスと破断エネルギーともに大きな変化は表れなかった.酵素濃度0.5,1.0,1.5%の試料では時間の経過に伴いインピーダンスが減少し,破断エネルギーも同様の低下傾向を示した.このときのインピーダンスと破断エネルギーの関係を直線で回帰した際の決定係数はそれぞれの酵素濃度でR2=0.933,0.984,0.986であった.以上の結果は,レトルトパウチ内の酵素処理牛肉の硬さの変化をインピーダンス計測により非破壊で推定できる可能性を示している.

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© 2018 日本食品科学工学会
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