日本食品科学工学会誌
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技術論文
角型食パンの品質特性に対する全粒粉使用と酵素添加の影響
松下 耕基寺山 采花五嶋 大介高田 兼則山内 宏昭
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キーワード: 全粒粉, 酵素, 製パン性, 品質, 物性
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2019 年 66 巻 6 号 p. 201-209

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抄録

標準的食パン配合のノータイム法で作成した角形食パンについて,精白粉のみの対照(C),Cの精白粉の40%を全粒粉(W)で置換した区(C+W),C+Wにさらに最適量の2種の酵素(α-アミラーゼ,へミセルラーゼ)を添加した区(C+W+E)の3水準の食パンの製パン実験を行った.そして,それぞれの生地の各種製パン性評価と各生地から作成したパンの外観,内相評価,3日間の保存経時における各種物性評価を行った.その結果,C+W,C+W+Eの生地において,Cと比較して高いGPを示した.この主要因としてはWに含まれる栄養成分がイーストの発酵を促進したことが考えられた.また,Wに含まれる表皮やふすま等の色の影響によりWを使用したパンはCのパンと比較して暗い色相を示した.さらに,Wに含まれる過剰量の食物繊維が生地中の良好なグルテンネットワークの形成を阻害したことによりWを添加した生地のGRDはCと比較して有意に低下した.一方で,C+W+Eの生地ではGRDの有意な改善が見られた.また,最適量のE添加による製パン性改善効果は保存経時の物性評価においても見られ,パンクラム中のデンプンゲルの老化アミロペクチンエンタルピーの老化速度の低下,それに伴うパンの老化遅延効果,破断応力の低下,破断歪率の増加,各粘弾性係数の減少が確認された.C+W+Eのパンの物性等における改善効果は,α-アミラーゼとへミセルラーゼがそれぞれ生地中の製パン性を低下させる要因である損傷デンプンや不溶性食物繊維等を低分子量の糖類へ分解したことが主要因であると考えられた.

以上の結果から,Wと最適量のEの添加がパン生地の製パン性,角形食パンの各種品質,物性に与える影響が明らかとなった.また,最適量のE添加により高い機能性と製パン性を兼ね備えたW添加角型食パンの製造が可能であることが判った.

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© 2019 日本食品科学工学会
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