2020 年 67 巻 11 号 p. 424-429
R-FISSにて算出したコーヒー飲料飲用時のレトロネーザルアロマに含まれる香気成分の定量値比は,各香気成分が特有の値を示した.この定量値比は,10呼吸分の定量値を最初の1呼吸目の定量値で除した値であることから,その大小は香気成分の発現速度(フレーバーリリース特性)を示すことが予想される.そこで,R-FISSにおける定量値比の大小と,レトロネーザルアロマの時間変化の関係をリアルタイム測定にて調べた結果,定量値比の小さい成分は飲用後速やかに減少し,定量値の大きい成分は飲用後長時間に亘って一定量が維持される傾向を認めた.さらに,TDS法による官能評価結果も,R-FISSで得られた各香気成分の定量値比から予測された風味変化と矛盾しないことがわかった.これらの結果は,F-FISSにより得られる定量値比が,飲料における香気成分ごとのフレーバーリリース特性の評価に適用できることを示している.