日本食品科学工学会誌
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緑茶茶葉から浸出液へのストロンチウムおよび主要無機元素の挙動
進藤 久美子八戸 真弓
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2020 年 67 巻 12 号 p. 483-492

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抄録

人工的に生成する放射性核種 90Srも,天然に存在する安定同位体のSrも,化学的性質はほぼ変わらないことから,天然に存在するSrを定量して緑茶類から浸出液への 90Srの挙動を推定した.Srの挙動を特徴づけるため,Srと化学的性質が似ているCaおよび同時に測定可能な無機元素も検討の対象とした.7種類の緑茶を使用し,緑茶の種類ごとに一般的な浸出法を用いて三煎まで浸出液を調製し,茶葉と浸出液および茶殻を試料とした.茶葉から浸出液への移行割合Frは,おおむねK,Ni>Zn>Mg>P>Mn>Al>Ba,Sr,Cu,Ca>Feであった.浸出液へのSrの移行割合は,一煎目で0.01未満から0.07と今回調べた無機元素の中では低く,90Srが存在した場合でも浸出液への移行割合は同様に低いと推定された.茶葉から浸出液への移行割合は,多くの緑茶類でSrとCaが類似しており,ほうじ茶が例外であることに留意すれば,Caが 90Srの目安として利用できる主要元素と判断された.

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© 2020 日本食品科学工学会
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