本研究では,カット西洋ナシを供試材料として-5℃で3日間の過冷却保存を適用し,保存後の試料組織の特性および理化学的特性について1℃で氷温保存した試料と比較した.はじめに試料組織の特性について,電気インピーダンス測定による細胞膜閉鎖性,光学顕微鏡観察による細胞構造,およびTTC還元法による細胞活性の観点から評価した.その結果,カット西洋ナシ試料は過冷却保存後も明確なCole-Coleプロットの円弧を描いたことから細胞膜閉鎖性が維持されたことが示された.また,生鮮試料と同等の細胞構造および細胞活性を有していたことが示された.理化学的特性について,過冷却保存した試料では目減り,色彩変化および軟化が氷温保存した試料よりも有意または有意傾向で抑制されたことが示された.さらに,エチレン生成が氷温保存した試料と比較して著しく抑制されたことが示された.以上の結果から,過冷却保存では氷温保存よりも更なる低温度帯の利用により,カット西洋ナシの品質保持および日持ち向上を期待できる可能性が示された.