日本食品科学工学会誌
Online ISSN : 1881-6681
Print ISSN : 1341-027X
ISSN-L : 1341-027X
研究ノート
‘マスカット・べーリーA’ の圧搾過程の成分推移
恩田 匠小嶋 匡人長沼 孝多
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 68 巻 5 号 p. 212-215

詳細
抄録

‘マスカット・べーリーA’ を原料として,フランス・シャンパーニュ地方の伝統的な製法により,ブドウからの果汁調製を行った圧搾過程の成分推移を調べた結果,次の知見が得られた.

(1)スパークリングワイン製造のために早期収穫したブドウ果の圧搾の結果,圧搾が進行する後半で酸度が高くなることが認められた.

(2)圧搾後半で酸度が高くなる傾向は,我が国固有の ‘甲州’ に類似することが分かった.一方で,圧搾後半で,‘甲州’ は酒石酸含量が急激に増大したが,‘マスカット・べーリーA’ は酒石酸は一定濃度で推移した.また,リンゴ酸の溶出は,圧搾時の加圧により影響を受けるパターンを示した.

(3)スティルワイン製造に適熟のブドウ果を用いた検討でも,(1)および(2)とほぼ同様な傾向が認められた.

(4)‘マスカット・べーリーA’ を圧搾して得られる一番搾り果汁(キュベ)と二番搾り果汁(タイユ)では,タイユの方が酸度が高い結果が確認された.これは,ブドウ果の圧搾過程で,後半にリンゴ酸含量が顕著に高くなることに起因することが明らかとなった.

以上のことから,キュベとタイユからのワインをブレンドするときには,そのブレンド比率などを考慮しなければならないことが考えられた.

著者関連情報
© 2021 日本食品科学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top