日本食品科学工学会誌
Online ISSN : 1881-6681
Print ISSN : 1341-027X
ISSN-L : 1341-027X
研究ノート
卵白オボムコイド・米 γ-グロブリン混合タンパク質の加熱誘導ゲル化特性
太田 尚子丸山 奈実植松 あいか
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 68 巻 9 号 p. 380-387

詳細
抄録

熱安定性が高い食品タンパク質の一つとして知られている鶏卵白由来オボムコイドと未利用な加熱凝固性タンパク質の一つである米胚芽 γ グロブリンの食品学的機能特性の向上を目指した基礎研究を行った.

米胚芽 γ グロブリン,オボムコイド共存下での両者の相互作用性について,動的粘弾性測定,超音波分光分析,SEM観察,FT-IR分析およびSDS-PAGEを用いて探求した.その結果,米胚芽 γ グロブリン+オボムコイド混合系は中性pHにおいて米胚芽 γ グロブリン単独タンパク質に匹敵する弾性率を有するゲルを形成することが判った.また,超音波分光分析により,混合ゲルにおいて,ゲル形成過程での水素結合の寄与が大きくなることなどが示された.

更に加熱処理前の超音波減衰値に基づく粒子サイズ解析および,SEMによるゲルの微細構造解析により,混合ゲルは,米胚芽 γ グリブリン単独ゲルに比べ小さい凝集体の集合により成っていることなどが示唆された.

以上のことから,オボムコイドは共存する熱凝固性タンパク質のゲル化特性にテクスチャーモディファイヤーとして影響を与えることが判った.今後は,本研究で行ったゲルのSEM観察に加え,共焦点レーザー走査顕微鏡観察なども併用し,混合タンパク質中での個々のタンパク質の存在状態などを可視化したいと考える.

著者関連情報
© 2021 日本食品科学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top