日本食品科学工学会誌
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技術論文
製粉法および品種の異なる大麦の粉体特性と組成が大麦パンの膨化特性に及ぼす影響
中塚 康雄
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2022 年 69 巻 11 号 p. 529-540

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抄録

本研究では, グルテンを添加しない大麦混合パン (以下, 大麦パン) の膨化特性について大麦4品種と製粉4方法を組み合わせた14種類の大麦粉を調製し, 実践的スケールの製パン試験 (山型食パン, 大麦配合率;10~50 %) を行った. 大麦品種として, 食物繊維量の異なるうるち性2品種ともち性2品種を用いた. 製粉方法として, 気流粉砕法, ピンミル法, ロール製粉法, 高速グラインダ法を比較した. その結果, 大麦パンの膨化特性に影響を与える重要な因子は, 大麦粉中のβ-グルカンやアラビノキシランを主体とする細胞壁や食物繊維の粉砕状態, および大麦パン中に含まれる食物繊維の総量であることが示唆された.

(1) 膨化特性に優れた大麦粉の製粉条件は, デンプン粒子が糊化しない30℃以下の低温製粉技術とデンプン粒子が胚乳細胞から散逸しやすい細胞壁の破れを作り出す微粉砕化技術と考えられた.

(2) 膨化特性は大麦パン中に含まれる総食物繊維量と有意な負の相関性が認められた.

(3) うるち性大麦パンともち性大麦パンで回帰分析を行った結果, アミロース含量は膨化特性に影響しないと推察された.

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© 2022 日本食品科学工学会
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