2026 年 73 巻 4 号 p. 99-106
赤ワイン用ぶどう品種である山幸は, 耐寒性に優れ, そのワインには華やかなアロマと未熟臭があると報告されているが, 原料果汁の香気に関する報告はない. そこで, 成熟過程における山幸果汁の香気成分を調べるとともに, 成熟促進の効果があるとされる栽培中の除葉操作の有無が果汁香気に及ぼす影響を検討した. その結果, 山幸ぶどうの重要香気としてmethional, vanillinが示され, またグリーンの香気を有する複数の成分が成熟に伴い変化し, グリーンの匂い強度は減少することが分かった. 未熟臭の原因でありグリーン香の特徴成分とされるIBMP は香気強度が低かったことから従来のピラジン類だけでは説明できないグリーンの香調が山幸ぶどうおよびワインの香り構成に寄与している可能性が示唆された. 成熟に伴い, methionalが増加しグリーン様の香気成分は減少傾向を示すものの, 完全には消失せず, 山幸ぶどう特有の香りバランスを保つ役割を果たしていると考えられた. 除葉操作の有無はぶどうの糖度や酸度に影響せず, 成熟促進効果があるとは言えなかった. 香気分析においては未熟臭として懸念されるピラジン類の香りへの関与が低かった半面, グリーン様の香気は除葉により減少していたことから, 香気には変化をもたらすと推察された.