日本食品科学工学会誌
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ビール産業における製品種多様化に対応した網羅的微生物検査技術の開発
篠原 雄治ヨハネス ノヴィクルニアワン鈴木 康司佐見 学
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論文ID: NSKKK-D-22-00095

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抄録

ビールは、その特徴(エタノールの存在、低いpH、高いCO2含有量など)により、微生物の増殖が抑えられ、微生物学的に安定な飲料として認識されてきた。その一方で、限られた微生物はビール中で生育が可能であり、それらの微生物はビール混濁微視生物と呼ばれる。近年、新規なビール混濁微生物の出現や、従来の伝統的なビールよりも微生物学的安定性が低い非伝統なビール(ローアルコールビール、ノンアルコール飲料など)の人気の高まりにより、ビール混濁微生物が継続的に出現し、微生物による変敗事故が発生する可能性がある。このようなビール混濁微生物の増加は、種特異的なPCRベースの検出方法に大きく依存する検出法では、対応できなくなると考えられる。よって、種特異性にとらわれないより普遍的な検出法、すなわち「種非依存的」な検出法と、「より広範な微生物種を正確に判定できる包括的な種判定法」が必要とされると考えた。そこで、著者らはホップ耐性遺伝子horAやhorCなどのビール混濁乳酸菌特異的な遺伝子マーカーを用いた種非依存的なPCR検出法、および新しい技術である第3世代DNAシーケンサー(MinION)を用いた微生物同定法を開発し、高精度かつ広範囲で、醸造所における品質管理として使い勝手のよい手法を確立した。また、第3世代DNAシーケンサーを用いた複数の標的遺伝子の同時解析に成功し、種の同定と種内識別のための、特異的遺伝子マーカーの検出を同時に行う方法を考案した。第三世代シーケンサーは、その応用範囲の広さ、初期投資コストの低さ、ランニングコストの低さから、ビール工場における新たなビール混濁微生物対策の武器として広く採用されることが期待される。

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