日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
凍結乾燥魚肉に関する研究(第1報)
予備凍結の条件が凍結乾燥魚肉蛋白におよぼす影響
上岡 康達岡 弘康末光 栄充
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1964 年 11 巻 1 号 p. 12-20

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抄録
予備凍結の条件が凍結乾燥魚肉蛋白におよぼす影響をみるために,硬直前のスズキ肉を用い,-40℃,-20℃,に予備凍結して,凍結後,乾燥後,および貯蔵(常温,低温の2区)中における蛋白の性状を,溶出蛋白量,塩析分析によって調べ,さらに吸水率を測定して水戻りの程度を検討した。
(1) 凍結直後のミオシン区蛋白の溶出量は,-40℃凍結区において減少し,-20℃凍結区において増加がみられたが,乾燥直後においては,両者とも生肉とほとんど変りがなかった。
(2) 貯蔵中における蛋白の溶出量も,予備凍結の条件に影響されず,主として貯蔵温度に支配されているようである。すなわち29~32℃で貯蔵したものは40日後,そのミオシン区蛋白の溶出量は当初の1/3に減少したが,3℃で貯蔵したものでは,43日後においてもほとんど変化がみられなかった。
(3) 水溶性蛋白は凍結によっても,脱水によっても変化せず,また凍結条件,貯蔵条件に影響なくほぼ一定であった。
(4) ミオシン区蛋白の塩析曲線は,凍結条件のいかんにかかわらず,凍結後,乾燥後においては,硫安飽和濃度30%付近に大きな山をもっており,これはアクトミオシンと推定された。貯蔵中における曲線の変化は,蛋白の溶出量同様,貯蔵温度に影響され,常温貯蔵区では20日後に曲線のみだれが大きく,ミオシン区蛋白の質的変化が推定されたが,低温貯蔵区では43日後においても硫安の30%飽和付近に大きなピークがみられ,ミオシン区蛋白にあまり変化がないことがうかがわれた。
(5) 吸水率は,吸水時間60分では全試料ともはなはだ悪く,-40℃凍結区は-20℃凍結区に比して蛋白の変性度の多少を問わず吸水率が低いことがみられ,溶出量,塩析曲線にみられる蛋白の性状変化との関連が認められなかった。
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