抄録
トマトジュース中において,lycopeneが細胞内に顆粒状に存在している場合と,トマト細胞が破壊されly-copeneが細胞外に細かく分散している場合とがある。われわれは人為的にこのような2種のトマトジュースを作り,lycopeneの安定性の違いについて調べた。その結果,
(1) 室温貯蔵(20℃ ,37℃,6カ月間),高温加熱(95℃,110℃, 120℃, 130℃, 10分間)と光の照射(窓ぎわ5カ月)間においては2つの試料のlycopeneの安定性に差は認められなかった。しかし2試料のlycopeneは光によって2%,高温加熱により5~15%減少した。
(2) Fe3+, Cu2+, Sn2+の金属イオンを加えた高温加熱によっては金属イオンを加えた試料のlycopeneが予期に反してわずかに安定であった。しかし細胞内外のly-copeneの安定性には差は認められなかった。
(3) トマト中のnatural antioxidantについてわれわれの実験結果から2, 3考察を加えた。