1973 年 20 巻 10 号 p. 456-462
台湾(台中)産の緑熟バナナを6℃に貯蔵した果実,6℃に9日間貯蔵後20℃に変温した果実および20℃に貯蔵した健全追熟果の三者について14C-アスパラギン酸および14C-セリンの取込みと,PGDH活性およびSDH活性とを比較して次の結果を得た。
14C-アスパラギン酸の有機酸への取込みと中性(糖)区分への取込みの割合を比較すると,6℃に貯蔵したものでは4日目までは健全果と大差ないが,6日以後は健全果よりも著しく高くなり,とくにhexose区分への取込みが高くなる。14C-セリンの取込みについても同じように糖区分への取込みが多くなり,有機酸への取込みに対する割合は健全果よりかなり高い。
20℃に変温後3日目までは同様な現象が見られるが,5日以後になると14C-アスパラギン酸の糖区分への取込みは減少するが,hexoseへの取込みは増加し,pentoseへの取込みも著しく増加する。しかし14C-セリンの取込みは14C-アスパラギン酸の取込みと異なり5日目以後は糖区分への取込みは減少し,7日目には有機酸およびエタノールへの取込みが増加する。14C-アスパラギン酸のエタノールへの取込みはいずれの果実においても大きな変化は認められなかった。
6℃に貯蔵してもPGDH活性およびSDH活性は健全果と大差ない。しかし20℃に変温すると変温直後から両酵素活性は増加し始め,追熟に伴いさらに活性は増加し7日目に至り最大となる。
以上の実験結果に基づき低温障害果のgluconeogenesisに関連する代謝経路を考察した。